霜月挽歌


  一年の月日疾く経ち菊花再び挽歌の数々読み返しおり


  母親の腎臓もらい二十余年
           生きし女人(ひと) 逝く独り寝の床

  己が血を体外装置で浄めつつ
           生を紡ぎし時の重さよ

  我が腎臓奪いて逃げしと駄々をこね
           母慟哭す逆縁の朝

  眠りなば夢で娘に出会うやと
     無理矢理まどろむ忍び泣きつつ

  母はただ悲哀に濡れぬ静まりて
            坐す父親の心はいずこに

  白菊の香りとともに昇り行く
            紫煙に溶け込む霜月の雨

  母よりは我に似たりと人の言う
      姪夭折す五十路半ばで

  子も夫も持たぬ女(ひと)逝く残されし
            品々見守る姉と弟

  死の予感少しもなきまま逝きたるか
            前日日付のバンクの袋

  引き出した生活費残る袋中
           冬に備えし通販の証

       

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